人材育成研修

【目次】
1.何のために教育・研修を行うのか?
2.優秀人材と研修プログラム
(1)教育研修費の節約
(2)スキル研修とマインド研修
(3)人材マトリックス
(4)人材の特徴に即した研修
3.当所の教育・研修コンサルティング
(1)研修企画から検証までの手順
(2)研修メニュー
4.オンライン研修

1.何のために教育・研修を行うのか?

 日本は,バブル経済期においてどの企業も「グローバル人材の育成」を課題に挙げて貿易実務や語学力を修得するために,勤続5年以上の中堅社員に語学研修と称して欧米に留学させていました。しかし,留学させた企業の思惑は外れ,帰国後は自社に戻らず語学を活用できる一流の商社などに転職をしてしまったということが話題になりました。
 なぜ,このような結果になってしまったのでしょうか? 今なら誰もが予想できることですが,送り出す企業の経営者が「人材にお金をかけて留学させたのだから語学や留学先の情報を生かして自社の経営に役立ててくれるはず」と思っていたに違いありません。しかし,経営者が思うほど人の気持ちを掴むのは容易なことではありません。帰国後は自社での待遇を求人情報や他社と比較して条件のいい就職先に転職することは当然考えておかなければならなかったことです。
 つまり,語学留学をさせる時の条件を留学希望者にきちんと書面で伝えておく必要があったということです。

研修は「誰に対して,どのような効果を期待して行うか」を明確にして行うこと

 会社が社員教育を行う時,最初に考えなければならないことは「誰に,どのような効果を期待して実施するか」ということです。
 その答えは,経営理念の実現であり,具体的には経営計画の達成に必要な人材育成のために行うものということができます。会社は経営計画の実現をとおして経営理念を実現するものですが,そのことは,社員が仕事をとおして身につけるキャリア形成につながります。
 いくらDX人材が必要だと経営者が叫んでみても,また,DX人材の定義を行ったところで,社内にそういう人材がいなければ,DX人材の育成または,DX人材の中途採用を行うよりほかに道はないのです。
 このように計画を立てて実行しなければ,いつまでたっても社内業務のDX化は進まないわけです。この意味で人材教育や研修は明確な目的を持ち,人材育成計画を立てて実施する必要があるのです。

2.優秀人材と研修プログラム

次に,研修の参加対象者について考えてみましょう。
 かつて日本企業では階層別研修が盛んに行われていました。入社したての新入社員研修から始まり,中堅社員研修,監督職研修,管理職研修,執行役員研修へと勤続年数を元に階段を上っていく感じで行われていました。
 これは日本企業が年功序列型の人事制度を行っていた時の研修体系の一例といえます。そして,1991年のバブル崩壊後からは企業も人材にかける予算不足から選抜型研修などへと研修の見直しが行われた結果,階層別研修は少なくなり,代わってテーマ別研修を行うようになってきました。
 略歴をご覧いただければわかるように,筆者は2007年頃から2011年位までの4,5年間,ビジネスセミナーを主催する研修会社から「教育・研修体系の作り方と効果の測定」と題した公開セミナーの講師を依頼されていました。

(1)教育研修費の節約

 先ほど選抜型研修の話をしましたが,バブル崩壊後の企業は急速に業績が悪化し,全産業にリストラの嵐が吹き荒れた時期でした。会社内では交際費,広告宣伝費,教育訓練費の頭文字を取って3Kと呼んでいた経費の削減が行われたため,外部研修費なども節約するよう通達が出ていました。その関係で,広く一般的に実施されていた階層別研修なども自粛されてしまいました。
 その結果,研修に参加した社員は研修成果を使って会社に貢献できるかどうかが問われるようになっていました。その頃SMBCの研修担当者からの依頼があり,筆者が先ほどのテーマの研修を公開セミナーで行うようになったのです。

(2)スキル研修とマインド研修

 テーマ別研修にもさまざまな内容のものがあるため,社員を外部研修に参加させる場合,上司は事前に期待できる研修効果を確認しておく必要があります。
 つまり,ネットやDMで募集しているからといって自分の部下を場当たり的に外部研修やセミナーに参加させるようなことは,研修費のムダ遣いの何物でもありません。外部研修に参加させる場合,研修費だけでなく研修時間も費やすことになるため会社としては相当の出費になります。
 したがって,研修に参加することで得られるスキルやメリットを考えて人選する必要があります。中期人材育成研修では人事部門が行う年次別の階層研修だけでなく,専門性や仕事に対する取組姿勢などを養う外部研修は,部門長が部下の中期人材育成計画の中で管理すると漏れやダブりがなく公平性が保たれることにもなります。
 部下に受けさせたい研修テーマは,次の節で解説する*「人材マトリックス」を使ってセグメントした人材に必要なスキルとマインドを軸に考えると明確になります。

*「人材マトリックス」は,拙著『人材ポートフォリオマネジメントによる多様性人材の戦力化』(2005年同友館発行)において,著者が使用した造語
(3)人材マトリックス

「人材マトリックス」を使って社員をセグメントすることによって,それぞれの人材に必要な教育や研修が見えてきます。

 XとYという2つの評価軸を交差させて4つの領域に分類される人材について,解説いたします。詳細は,先に掲げた『多様性人材の戦力化』に既述したので興味のある方はそちらをご覧ください。

①B型人材(図表の左上の領域)
 スキルは低いがマインドが高い人材です。
 このタイプの人材は担当業務の「初心者」(ビギナー:Beginner)に多いのが特徴です。やる気は十分あるがスキルがないため,なかなか成果に結びつきません。OJT(On the Job Training)によって伸びていくタイプです。社内では全社員の5%くらいがこのタイプの人材で占められています。
 このようなやる気のある初心者にはティーチングが適しています。
②F型人材(図表の右下の領域
 企業に最も多いのがこのタイプの人材です。
 スキルは高いがマインドが低いため,自発的に仕事の流れを変えようとしない現状維持タイプです。業務はひととおりこなせますが新しいことにチャレンジしようとはせず,ひたすら上司の指示に従うことが自分の役割だと思い込んでいるふしがあります。
 このタイプの人材は,いわゆる「指示待ち族」(フォロワー:Follower)と呼ばれるベテラン社員に多いという特徴があります。残念ながら日本企業にいる社員の85%はこのタイプの人材といってもいいでしょう。
 したがって,企業を活性化するためには,圧倒的多数を占めるこの人材を動機づける必要があるのです。しかし,今まで上司の顔色を窺って仕事をしてきたため,なかなか一人立ちができない依存型の人材です。
 F型人材の教育にはコーチングが適しています。
③L型人材(図表の左下の領域)
 スキルもなければマインドも低いタイプの人材です。
 企業内のどの部門にも必ず1人か2人はいます。全社員の約5%がこのタイプの,いわゆる「ローパフォーマー」(Low performer)と呼ばれる人材です。
 ローパフォーマーとは,勤怠不良者・勤務成績不振者のことを指します。技術も身につけていなければ仕事に対する意欲にも欠けているL型人材は,人生における落伍者といえます。
 したがってL型人材に対しては,まずティーチングを行い,その後でコーチンを実施するようにしましょう。
 ただ,こうした教育を行っても本人にやる気が起きなければムダな投資になってしまいます。そのため,教育・研修を行う前に上司は本人と事前面接などを行って覚悟を確かめる必要があります。
④H型人材(図表の右上の領域)
 仕事もできるが,やる気も十分あるというタイプの人材です。
 志が高いので,どんな仕事でも任せられるし,期待以上の成果を上げられるコア人材で,いわゆる「ハイパフォーマー」(High performer)と呼ばれる将来のリーダー候補といえます。1社にH型人材が10%もいれば,その会社の将来は有望です。
 H型人材は上司が仕事に関していちいち細かい指示を出さなくても,自主的にビジネスの成功モデルをつくり上げて自発的に取り組むことができるという特徴があります。
 このタイプの人は,自分で将来のキャリアビジョンを描き,現在の自分に不足している知識や技能や資格などについては日頃から自己啓発を行い積極的に吸収するようにしているので,もちろん人材育成教育は不要です。
(4)人材の特徴に即した研修

 「人材マトリックス」で人材のセグメントを行った結果,各タイプ別の教育・研修が明確になります。上図は人材のタイプに即した研修の例です。自社の社員研修の参考になれば幸いです。

【人材タイプ別教育・研修】

人材のタイプ 特徴 割合必要な
教育
研修のタイプ     研修テーマ
B型
人材
初心者 5%ティーチング スキルCS,コミュニケーション,プレゼンテーション,
ロジカルシンキング,リーダーシップ研修等
F型
人材
指示
待ち族
85%コーチング マインド評価者・被評価者研修,ハラスメント, コンプライアンス, マインドリセット研修等
L型
人材
勤務成績不良 5%ティーチング+コーチングスキル
+マインド
意欲喚起が先
H型
人材
優秀
人材
5~10% 不要     -

 このように,人材をスキルとマインドという評価軸でセグメントすると,企業にとって必要な人材と人材教育の必要性が見えてきます。また,優良企業には優秀な人材が集まり,優秀な人材が社会に必要とされる新しいビジネスを次から次へと創造し,継続的に付加価値を産み出し,結果的に企業を発展させることになります。
 つまり、優秀な人材の多い企業とそうでない企業とでは創造する付加価値の量の差になって現れてくるのです。
 それには,日頃からマーケットニーズの変化を察知し将来のビジネスについて考える不断の努力が必要です。
 外部研修の受講も課題解決のソリューションのきっかけになります。

3.当所の教育・研修コンサルティング

 次に,当マインド経営研究所の教育・研修コンサルティングについて説明いたします。当所のコンサルティングの特徴は2つあります。
 1つはカスタマイズで
研修を企画し実行するという点です。そのために,企業の研修担当部門や役員から研修ニーズを聴き取りプログラムに落とし込むようにしています。
 もう1つは運用重視のフォローアップ態勢をとっている点です。参加者だけでなく人事部門の担当者も「研修を実行した」ということで満足してしまい,研修の効果測定を考えていないケースを見かけますが,研修結果を実務に反映させなければ研修に参加した意味がありません。研修は参加することが目的ではなく手段です。研修の目的である効果を考えた運用が重要なのです。
 当所の人事コンサルタントは,研修終了後もアンケート等を分析し,研修結果を経営と参加者のキャリア形成に役立てるようサポートいたします。

(1)研修企画から検証までの手順

 マインド経営研究所の研修の実施フローは次のようになっています。

(2)研修メニュー

 以下の図表は当所が行っている研修テーマです。実際にはカスタマイズして研修プログラムやテキストを制作するため,研修内容はお客様との事前打合せの際に決まります。

4.オンライン研修

 2020年に発生した新型コロナウィルスの感染拡大を契機に当所では,Zoomを利用したオンラン研修を推奨しています。
 従来から顧客の会議室等を利用した対面型の研修も行っていますが,Web会議システムが急速に普及したことによりZoom機能も進化したため,対面型研修で行ってきたスタイルと同様の方式で実施することができます。