人事制度FAQ

 ~社員のやる気と能力を引き出し生産性を向上させる~

話題の人事制度から役割等級制度のつくり方までユーザーの疑問にお答えします!
【目次】

(第1問)人事制度は何のためにあるのですか?目的がよくわかりません。

(第2問)人事制度の良し悪しについて教えてください。

(第3問)アメリカの人事制度はジョブ・グレイディング・システム(職務等級
 制度)1本なのに,なぜ日本の人事制度はいろいろな種類があるのですか?

(第4問)人事制度の最終目的は何でしょうか?

(第5問)現在企業の人事部門にはたくさんの課題や問題が山積していまが,
人事制度改革の実施時期は,いつが適していると思いますか?

(第6問) 人事制度は,①〇〇制度,②〇〇制度,③〇〇制度の複合体で構成
されています。 それぞれの〇に文字を入れてください。

(第7問)人事制度の基本理念は,①〇〇性,②〇〇性,③〇〇性の高い仕組
  みを確保することです。それぞれの〇に文字を入れてください。

(第8問)人事評価は相対評価か絶対評価か?どちらが正しいと思いますか?

(第9問)会社は何のために社員を評価するのでしょうか?評価の意義・目的に
ついてお答えください。
(第10問)人事制度は営業職と製造職で差をつけた方がいいのではないでしょう
か?

【第1問】人事制度は何のためにあるのですか?目的がよくわかりません。
【第1問の答え】

 人事制度とは,社員の処遇・待遇の仕組みのことです。皆さんは仕事をしているときに「頑張った」とか「頑張りが足りなかった」などという声を聞いたことがあると思います。
 会社での仕事の進め方には個人差があります。毎日一生懸命取り組んでいる人もいますが,体調不良などで気が乗らない時などは,少し手抜きをすることもあるのではないでしょうか。
 一方,会社には個人の勤務態度や仕事の成果について一定期間ごとに人事評価を行う仕組みがあります。
 これは,「頑張って一定の成果を上げた人」と「惰性で仕事を行った結果,そこそこの成果しか上げられなかった人」に対して,同じ評価を下すことは「不公正」という判断から,評価に差をつけることによって頑張った人もあまり頑張らなかった人も次の期間の取組みに奮起を促すことを目的にした評価制度(「人事制度」の一部)なのです。
 人事制度は,この評価制度の他に等級制度と給与制度という仕組みで構成されています。なお,等級制度と給与制度についての説明は別の質問の回答で解説しています。ご確認ください。
【第2問】人事制度の良し悪しについて教えてください。

【第2問の答え】

 「いい人事制度」とは,人事評価において「努力が報われた」と社員が実感できる仕組みのことです。
 評価期間内にいくら頑張っても,上司である評価者が自分の主観や先入観で評価を行っても問題にならない仕組みでは評価制度として機能しているとはいえません。つまり,いくら優れた評価制度であっても運用面で機能不全に陥ってしまう仕組みは「いい評価制度」とはいえないわけです。
 評価者が被評価者の思考や行動を常に観察し,時には本人のためになる有効なアドバイスやサポートを行うことが評価制度の仕組みに組み込まれて初めて「いい評価制度」ということができます。
 他方,「悪い人事制度」とは,「社員の努力が報われない仕組み」のことです。
 「努力が報われること」の具体例は,頑張った社員には昇給,昇進,昇格が約束できるということです。
 つまり,「上司が部下の成果を評価する」ということは,会社が部下の仕事の成果を認めるということにつながります。そして,そのことによって部下である社員は仕事にやりがいを感じることができるようになるわけです。
 この意味で,人事制度の仕組みは社員のモチベーションの源泉といえるでしょう。また,「年齢」,「勤続」,「性別」といった仕事の成果とは関係のない要素で昇給や賞与,昇進や昇格に格差をつける仕組みは,本人の「努力が報われない仕組みのため,「悪い人事制度」といえます。
【第3問】アメリカの人事制度はジョブ・グレイディング・システム(職務等級制度)1本なのに,なぜ日本の人事制度はいろいろな種類があるのですか?

【第3問の答え】

 たとえ話ですが,あなたは事故や病気にかかったときに病院で治療を受けると思いますが,あなたを診断した医者は風邪をひいたときも階段から落ちてけがを
したときも同じ薬を処方すると思いますか?
 つまり,風邪をひいたときは風邪の症状を緩和する熱さましや咳止め,のどの
炎症を抑える薬を処方するし,事故に遭った患者にはけがの状態を見て塗り薬や鎮痛剤を処方するし,場合によっては手術を行うことになるかもしれません。
 このように医者は患者の悪い部分を改善するための薬を処方します。
 次に人事制度について説明します。社会環境の変化等によって現状の仕組みが社員の処遇に合わなくなったとき,社員のモチベーションは下がります。このように,多数の社員の納得性が低くなった時には現行の人事制度に問題がないかを診断し,問題が明らかになれば現状に合った仕組みに改善する必要があります。
 また,日本には会社の規模や業種業態,経営理念や社風等によって会社の特徴が形成されるように,まったく同じ人事制度を運用している会社は1社もないといっても過言ではありません。
 こうしたことから人事制度は会社の数だけあるといわれています。
 それは会社によって経営理念や経営方針,経営計画,期待する社員像が異なるからです。人事制度設計で大事なことは,他社のモノマネや流行に流されることなく自社のオリジナリティを出すことです。 それは,自分の体形や体質に合った服を選ぶのと同じ理屈です。
 要は,それぞれの会社に合った仕組みを構築することが社員の納得性を高め,社員の満足度を向上させることにつながるのです。


【第4問】人事制度の最終目的は何でしょうか?


【第4問の答え】

 人事制度の最終目的は,会社の中期経営計画の達成と社員のキャリア形成を両立させることです。

【第5問】
 現在企業の人事部門にはたくさんの課題や問題が山積しています。
たとえば,
「社員に会社の経営方針を浸透させたい」
「仕事と給与のミスマッチを解消したい」
「定昇制度を見直したい」
「社員のキャリアパスの仕組みをつくりたい」
「人事評価を絶対評価に変えたい」
「同一労働同一賃金に変更したい」
「女性の管理職比率を上げたい」
「降給や降格の仕組みを取り入れてメリハリのある仕組みにしたい」
「M&A後の人事制度を統合したい」
「総額人件費管理を行いたい」
「成果主義を徹底したい」
「現場にわかりやすい評価制度にしたい」
「定昇制度を見直したい」など
挙げればキリがないくらいありますが,これらの課題や問題はどれも人事制度改革によって解決することができます。
 では,人事制度改革の実施時期は,いつが適していると思いますか?
【第5問の答え】

 今すぐに取りかかる必要があります。
 変化のスピードが著しく速い現在では,意思決定の速さ が人や会社の命運を決めると言って過言ではありません。
 「条件が整ってから・・・」
 「社内合意が得られたら・・・」
 「経営環境が改善したら・・・」
 「情報収集をしてから・・・」
 「十分スタディしてから・・・」
 などという考えは,「できない理由」を並べているだけに過ぎません。
 また,「うちの会社は特殊だから・・・」という言い訳は,新しいことに対する抵抗感があり,自分の経験しか信じない人の考えです。
 このようなスピード感覚では企業間競争には生き残れないと心得た方がいいでしょう。「やるべきこと」をすぐに実践することが優秀人材の条件と言えるのです。

【第6問】
 人事制度は,①〇〇制度,②〇〇制度,③〇〇制度の複合体で構成されています。それぞれの〇に文字を入れてください。

【第6問の答え】

 人事制度は,①等級制度,②評価制度,③給与制度の複合体です。時々,「人事制度」のことを「人事評価制度」という人を見かけますが,この「人事評価制度」という表現は,人事制度の構成要件である「評価制度」のことを指しているのか,「人事制度」と「評価制度」を混在させて呼んでいるのかがわかりません。
 例えば日本経済を「世界日本経済」と呼ぶようなものです。言葉は正しく理解して使いましょう。

【第7問】
 人事制度の基本理念は,①〇〇性,②〇〇性,③〇〇性の高い仕組みを確保することです。それぞれの〇に文字を入れてください。

【第7問の答え】

 人事制度の基本理念は,①公平性,②公正性,③納得性の高い仕組みを確保することです。特に三番目の社員の納得性が最重要といえます。
 人事制度の対象者である社員が納得できない人事制度は,「絵に描いた餅」で,ほどなく形骸化してしまいます。それは,人事制度はつくることが目的ではなく,運用が大事だからです。
 運用において社員が納得できない人事制度はすぐに陳腐化してしまいます。

【第8問】
 人事評価に関する次の主張はどちらが正しいと思いますか?
【第8問の答え】

 人事評価に関する正しい主張は「B」です。
 人事評価は評価を通して部下のモチベーションを高めることが会社の中期経営計画達成の条件になる重要な行為です。
 したがって,評価は事実に基づいて公正に行うことが評価者に求められます。
 これに対して,部門の全員をA評価にすると配分原資が不足するという理由で相対評価を行うべきと主張する人がいますが,原資配分と評価結果は切り離して考えるべきです。
 原資が足りないから評価を1ランク下げたり,不平不満が出ないように評価を上げたりすることは,却って評価の公正性と披評価者のモチベーションを下げることになります。
 なお,原資不足にならずに絶対評価を行う仕組みは別途解説したします。

【第9問】会社は何のために社員を評価するのでしょうか?評価の意義・目的についてお答えください。

【第9問の答え】

 会社が社員を評価する意味は2つあります。1つは,会社が社員に対して期待する目標に対してどれくらいの成果を残したかということを数値で確認することです。一言でいうと「一定期間における成果の確認」という意味です。
 会社の社員に期待する「目標」の設定を営業部門の社員を例にとると,売上や利益,新規顧客開拓数,新規契約件数,訪問件数などの具体的な数値目標もありますが,目標管理制度を使って社員に自主的に目標を設定させて,期末に目標に対する達成度を評価するといった方法もあります。
 どちらの方法がよいかという判断は会社の規模や業種業態などによっても異なります。
 もう1つの意味は,「教育」ということです。教育は戦後の受験戦争を勝ち抜くための暗記中心の詰込み型教育から最近では生徒や学生の能力を引き出すための教育方法に変わってきました。
 これは,日本の従来の教育方法が先人の教えを学ぶだけの偏向教育だったことの反省として,2,000年以降文部科学省では「学士力」の強化を,経済産業省では「社会人基礎力」としての「考える力」を養うべきという教育理念からきています。
 会社における人材育成の重要性は言葉ではわかっていても,その方法は従前のOJT(On the Job Training)だけ行っていても思考力は身につきません。
 他方,現在会社で求めている人材は「DX人材」や「モバイル人材」と呼ばれている即戦力です。このギャップを埋めるためには人事制度の中の等級制度や評価制度に会社が社員に期待する人材像を明記する必要があります。
 経営者がDX人材が必要と頭で思っていても,人材育成の具体策がなければいつまでたっても人材育成はできないといっていいでしょう。

【第10問】人事制度は,営業職と製造職で差をつけた方がいいのではないでしょうか?

【第10問の答え】

 人事制度は,等級制度,評価制度,給与制度という3つの仕組みで構成されています。等級格付けは経営方針や社会環境,その時々の時代背景などによって変化します。そのことは人事制度史を見るとよくわかります。
 つまり戦後の社会経済混乱期は,政府も経営団体も労働組合もモノ不足に悩んでいたため,「つくれば売れる」という言葉をスローガンに製造業が脚光を浴びた時代でした。そのため,「優秀人材」の定義は長時間労働を嫌と言わない人材であり,その時代にマッチした人事制度が職能資格制度でした。
 しかし,高度経済成長期が終わり低成長期に入ると,つくったモノが売れず在庫が積みあがったことから企業経営者はバブル崩壊を機に業績重視の思考に変わり,業績を上げるために顧客満足度を経営方針に掲げるようになりました。
 こうした風潮により人事制度は,評価制度の中に目標管理制度を置く成果主義型人事制度が主流になりました。製造業もかつての大量生産から多品種少量生産に変わり,付加価値生産性が差別化の条件という考えの中で求められた人材は,研究開発部門の人材です。
 このように会社が期待する人材や部門はその時々の社会情勢や経営環境によって変化するため,一概に「製造部門より営業部門を重視した人事制度にする」ことがいいとは言えません。